旧暦というものがあります。簡単に言うと、昔のカレンダー。明治時代の途中に今のカレンダー(新暦)に切り替わりました。
旧暦は普段の生活で意識することはありませんが、漁業・年中行事・神社のお祭りなどには密接に絡んでいて、今でも現役の暦です。月の満ち欠けを基にしていて、毎月一日は新月、十五日は満月となります(十五夜)。そもそも、月が満ちて欠けての一回りをひと月、一カ月、という由来でもあります。
様々な言葉や生活習慣、行事のもとになった旧暦が新暦に切り替わったのは、つまるところ新暦のほうが便利だったから、に尽きますが、残念な弊害も少し……
一番の被害者は七夕の主役、織姫と彦星です。
難しい理屈は省きますが、旧暦は今のカレンダーと約1カ月ずれていて、本来の七夕が夏真っ盛りの時期だったのに対し、現在の七夕は梅雨の真っただ中になってしまいました。
七夕伝説といえば、愛し合っていながら星となり離れ離れになってしまった織姫と彦星が年に一度だけ、七夕の夜に天の川を月の船で渡って逢瀬を重ねる、というもの。その日に雨が降ると船は出ず、二人は逢うことができません。
伝統的な七夕の日付であれば、夏の盛り、雨は少なく、ベガ(織姫)もアルタイル(彦星)も南の空に大きく輝いています。そして、旧暦の七日は必ず上弦の月、つまり半月が船のように夜空に浮かんでいたのです……
しかし残念ながら、現在の七夕は梅雨の最中。西洋化・近代化の波にのまれ、年に一度の逢瀬の機会をことごとく雨に流されてしまう二人の涙。
この日に降る雨のことを、催涙雨といいます。
今夜も雨、かな……?